ところで、『東海道四谷怪談』(1959年新東宝)である。
言うまでもなく、日本ホラー映画の名作中の名作なわけであるが、この映画が凄いのは、映像美というか、観ていて「きれいだなー」と思ってしまうところ。
歌舞伎の様式を採り入れている為か、テンポも良く、お岩の霊が登場するあたりは「待ってましたッ!」と声をかけたくなるほどだし、クライマックスで霊が次々に登場するあたりは思わず拍手してしまいそうになる。
伊右衛門役の天知茂氏は極悪非道なのに最後までカッコいいし、ラストの我が子を抱いて微笑むお岩役・若杉嘉津子殿はひたすら美しい。
http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/yotuyakaidan.htm
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怖かったといえば、同じ中川信夫監督の遺作となってしまった『怪異談 生きてゐる小平次』(1982年ATG)。
これは三角関係のもつれから、仲間の小平次(藤間文彦)を殺してしまった男女(石橋正次・宮下順子)の逃避行物語なわけであるが、道中、小平次によく似た男が追って来たり、二人で旅籠に入れば、
「あれ?三人連れじゃありませんでした?」
とか言われたり…と、いったい小平次が生きているんだか死んでいるんだか…ってところが妙に怖い。
http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=17235
筆者は『リング』とか『らせん』とかちっとも怖くなかったし、『呪怨』に至っては、映画館で観ながらあまりの馬鹿馬鹿しさにゲラゲラ笑い出してしまい、同行していた友人(残念ながら男である)を鼻白ませてしまった。
そういえば、せっかく女の子とお化け屋敷に入ったのに、
「お化けに触らないでください!」
とか場内アナウンスされてしまい、
「こんな人はもう知らない!」
とか言われて愛想をつかされてしまった…なんてこともあった(馬鹿だなぁ…)。
「ばぁ〜」
とか、
「ぎゃ〜!」
とか出て来るのはちっとも怖くないし、タイミング悪く出て来られたりすると、むしろ腹が立つ。
しかし、こういう精神的に怖い、ってのに弱い。
ホラーじゃないけど『惑星ソラリス』(アンドレイ・タルコフスキー監督、1972年ソ連)とか。
http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/wksslr.html
宇宙ステーションにいる博士のところに、死んだはずの奥さんが普通に訪ねてくる…みたいなのの方が、ホント怖い。
なんとかその奥さんの幻影をロケットに押し込めて、宇宙に飛ばしちゃうんだけど、そのあと部屋に戻ってみると、
「あなた、どこ行ってたの?」
みたいな…。
怖いよう…。