録画しておいた『上海バンスキング』をやっと観た。
ずっと観たかった芝居なのだが、生来のモノグサのせいで今まで観られなかったのだ。
『ミッドナイトステージ館』
「昭和演劇大全集」
NHK-BS2
3月8日(土)午前0:05〜2:35(7日深夜)
オンシアター自由劇場公演
『上海バンスキング』
〜昭和57年(1982年)東京・銀座博品館劇場で録画〜
記録的なロングランを果たした、日本のオリジナル・ミュージカルの傑作。
今回放送されるのは、銀座博品館劇場で上演された82年上演のもの。
【作】斉藤憐
【演出・美術】串田和美
【音楽】越部信義
【出演】まどか(ヴォーカル):吉田日出子、シロー(クラリネット):藤川延也、バクマツ(トランペット):笹野高史、リリー:余貴美子、弘田真造:中村方隆、白井中尉(テナーサックス):大森博、ラリー(トロンボーン):真名古敬二、方:鶴田忍、王:小島紀子、シングリー田口(アルトサックス):大谷亮介、レイモンド・コバチ(バンジョー):佐藤康治、宮下(アルトサックス):小日向文世、他
藤川延也、というのは演出の串田和美氏の当時の役者としての芸名である。
最近はTVや映画にもよく出ていて、『北の国から』の五郎さんの主治医役、映画『突入せよ! あさま山荘事件』の警視庁側の指揮官・丸山参事官役といえばわかるかなぁ…?
真名古敬二は現・真那胡敬二氏。
大森博は現・大森博史氏(この人も『突入せよ!』に長野県警の幹部役で出ていた)。
なお、シニアグラフィティでおなじみ東京ヴォードヴィルショーの大森ヒロシ氏とは別人である。
ともに元の芸名は「大森博」と一緒で、さらに当時二人とも大河ドラマ『毛利元就』に出演していたから、ややこしい。
他に端役で斉藤暁氏(『踊る大捜査線』シリーズの副署長)のお姿が…(今とあんまり変わらんのだが)。
作は斉藤憐氏。
考えてみれば、筆者が初めて観た本格的な舞台というのは、『バーレスク1931』という斉藤氏の作品であった。
余談だが、この舞台には、今やシニアグラフィティ等、ハロプロ関連の舞台ではおなじみの坂本あきら氏や佐渡稔氏(当時の芸名は「三木まうす」)も出てたんだなぁ…。
音楽の越部信義氏というのは、童謡「おもちゃのチャチャチャ」やアニメ『鉄人28号』、それに『世界・ふしぎ発見!』などの音楽の作曲家。
初演は昭和54年(1979年)六本木自由劇場。
役者たちが実際に戦前のジャズの名曲を演奏する、という通常のミュージカルとはまた違った趣向。
しかも終演後は劇場ロビーで演奏していて、観客のお見送りをしてくれるサービスも。
しかし実際には、音楽的にはゼロからのスタートだったらしく、役者さんたちは大変だったらしい。
以下、一緒に放送されていた81年当時のインタビューより。
(『NHKニュース』「オンシアター自由劇場を訪ねる」1981年5月6日放送)
・串田和美氏
「ミュージシャンの楽器の扱いじゃなく、俳優が肉体、声の他にもうひとつ表現手段をもてたらどういうことが出来るか?というのが課題」
・笹野高史氏
「音楽家に芝居を教えた方が早いんじゃないかって…(笑)」
・小日向文世氏
「(演奏は)セリフと一緒だな、という感じがしてきた」
・吉田日出子氏
「音楽やるのも芝居のひとつと考えています」
久しぶりに観た吉田日出子殿の、彼女独特の周囲とちょっとテンポの違う演技が可笑しく、またこの作品における“天真爛漫なお嬢様”という設定に合っていて…と、ふと最近、こういう演技をする人を観たなぁ〜、と思い至った。
(あっ、村為だ…!)
そうだ、『むらたさ〜ん、ごきっ』や『宇宙にタッチ』の村田めぐみ様の演技はまさにこういう感じだったのだ。
ということは、まどか役が村為殿で、リリーは?
チャイナドレスが似合うといえば、アヤカ殿か…。
あっ、ジュンジュン殿がいるではないか!
しかし、筆者の知人には吉田日出子殿の熱狂的な信奉者がおり、こんなことを書いていると命がいくつあっても足りないので、これくらいでやめておくことにする。
なお、映画版は深作欣ニ監督・松坂慶子主演のものがメジャーだが、実は串田和美監督・吉田日出子主演版もあったりする。
深作・松坂版(1984年)は、1982年に大ヒットした『蒲田行進曲』の二匹目のドジョウ…といった感が色濃く、
まどか:松坂慶子、シロー:風間杜夫、弘田:平田満の『蒲田〜』トリオに、
バクマツ:宇崎竜童、リリー:志穂美悦子、白井中尉:夏木勲(現・夏八木勲)…といったキャスティング。
これに対して串田・吉田版(1988年)は、
リリー:今江冬子、弘田:小日向文世の他は、舞台とほぼ同じキャスト。
ただ、映画にしてしまうと、舞台の「俳優たちが実際に演奏する」という最大のウリが失われてしまった感がある。