南アルプス天然少年団

南アルプス天然少年団

通りすがりの傍観者の足跡。

『ロマンチックにヨロシク』感想

散歩道楽特別公演」と銘打たれたこの舞台。
「特別」の意味は作・演出の太田氏によれば、劇団主催の本公演(『レモンスター』『すこし離れて、そこに居て』)とUFA主導のプロデュース公演(『おじぎ』『かば』両シリーズなど)の中間という立ち位置なんだそうだ。
また、当初の仮タイトルが「太田祭り」であった(笑)ことを踏まえれば、より一層太田色の濃い作品ということになるであろう。


一見独立した三つのストーリーを総合すると、ある一人の女性のちょっと切ない人生が浮かび上がるという構成。


振り返ってみれば、太田作品の登場人物は皆、人生うまくいってない人ばかり。
でも、じゃあ、それってダメな人生なのか?…っていうと必ずしもそうじゃない、というのが首尾一貫したテーマのように思える。


かつて某化粧品会社のキャッチコピーで、
「for beautiful human life
ってのがあって、もちろん和製英語なんだけど、これ、英語圏の人たちに言わせると、こんな馬鹿な言葉はないのだそうだ。
つまり、「human life」の形容詞としては「beautiful」はおかしい。
「beautiful」じゃない「human life」なんてあるわけないじゃないか、ってことらしい。


この物語もそうで、いろいろとうまくいかないけれど、
「やり直せるかもしれない」
というのが、ひとつのキーワードとなっている。
経験は決して無駄にはならない。


構成の種明かしは割合早くされ、中盤あたりでその一人の女性というのが誰のことだかわかるのだが、それからも、まだまだお話は続く。
それが切なさと希望の入り混じったラストへとつながってくる。



役者に関して。
太田氏のハロプロ勢(卒業生含む)への役の振り分けは、ヲタが、このコがこういう役をやったら面白いだろうな〜…、と思うところを絶妙に突いてくる。
いい例が『すこそこ』の「引きこもり:大谷雅恵」と『携帯小説家』の「オカルト好きのゴスロリ少女:中島早貴」だと思うんだけど…。


それでいて、『かば』や『すこそこ』で、非ヲタの観客層から、
「アイドルにあんな役やらせちゃって大丈夫なのか?」
という声があがっていたように(ヲタ的には全くの許容範囲内)、いわばギリギリの線をついてくる。


今回も相変わらず…。


「聖美ママ:保田圭
冒頭7分間にわたる彼女の長ゼリフから幕を開けるこの舞台、いろいろとうまくいってないんだけど、それでも懸命に生きていこうとするたくましさはこの人あってのものだし。


「真央:矢島舞美
思い悩んでいるのはわかるけど、ちょっとどこか勘違いしているようなところは彼女のキャラクターあってのもの。


特筆すべきは「春野スミレ:中島早貴」であって、あの切ないけれど希望の持てるラストの場面は、彼女演じる17歳の少女の明るい希望に満ちた姿が、より一層それを増長していたように思う。


ということはおそらく、ハロメンほどには知らないけれど、他の客演諸氏、例えばしおつかこうへい氏や深井順子殿(FUKAIPRODUCE羽衣)も、この方々のファンから見れば、ヲタがハロメンに思っているようなことが当てはまるに違いない。



なお、御手洗夫人役で貫禄の演技を見せてくれた磯辺万沙子殿(劇団昴)は、既に何度か触れているけど、北村総一朗氏夫人。
かつての『エンタ!見たもん勝ち』など、ハロメン(卒業生含む)とは何かと共演の多い方だが、保田圭殿は映画『ピンチランナー』と合わせれば、夫妻と共演したことになる。


また、℃-uteの二人については、彼女たちの芝居を観たのが、筆者、『携帯小説家』(2008年10月)以来だけど、格段に声が出ていたことには驚かされた。


やはり、経験は決して無駄にはならない。