南アルプス天然少年団

南アルプス天然少年団

通りすがりの傍観者の足跡。

『金と銀の鬼2011』感想

(公演終了につき、ネタバレあり。未見でDVDを楽しみにされている方は読まないか、斜め読みしてください)



昔、昔、人里離れた鬼の里に、コンジキ(高田淳)・シロガネ(大西小西)という鬼の兄弟が居た。
兄は人間を憎み、弟は人間との共存を望んでいる。
弟のシロガネは鬼の長である兄に勝てない。
ある日シロガネは、飛行機を研究している人間のライト兄弟(藤堂瞬・市川雅之)と知り合い、飛ぶことによって新たな力を得ようとする。
そこへ伝説のモモ太郎(大谷雅恵)という若者が鬼退治にやって来るという噂が入る。
鬼の長の座を狙うクロガネ(塩崎こうせい)は、モモ太郎を利用して兄弟を倒させようと企む。
しかしモモ太郎はまだまだ未熟だった。そこでクロガネはミドリ丸(トクナガヒデカツ)という武将に目を付け、彼に妖刀鬼切を手に入れさせようと。
しかし鬼切には、彼らの想像を超えた恐ろしい力が宿っていた…。



四方八方から観ることの出来るセンターステージという“見せる”ことを主体にした形体、単純明快なストーリーのように見えて、言葉遊びのようなセリフの端々に深い意味が込められている。
シロガネが実は元は人間だったのではないか?という疑惑があって、「くっつける」という言葉がキーワード。
それは角であったり、鬼と人間のことであったり。
「魂」という文字は「鬼が云ったこと」というのも興味深い。
また、色にも意味があって、桃は生、ミドリは死…。


モモ太郎は鬼退治=鬼胎児。
魂がまだ入ってなく、まだまだ未熟で子供っぽい。
「僕が一番強くなきゃいやだい」
なんて駄々をこねる。
そうだよなぁ。桃太郎って少年だったんだよなぁ…。
そのモモ太郎が大人であるミドリ丸と知り合って、しかしそのミドリ丸が鬼切を手にした時に…という姿を見て…という風に、一面、モモ太郎の成長物語として観ることも出来る作品。


モモ太郎役:大谷雅恵殿。
ハロプロの舞台では、メンバーが男役を務めることは少なくなかった。
『モーニングタウン』の後藤真希殿しかり、『草原の人』の柴田あゆみ殿しかり、宝塚と組んだ『リボンの騎士』や『シンデレラ』は言わずもがな。
ところがこの人の場合、「元メロン記念日・ボーイッシュ担当」でありながら、実は舞台で男役をやるのは初めて。
(初期メロンコンのVTRコントはイケメン役だったけど)
また、モモ太郎が女性だからということだろうか。
イヌ・サル・キジはみんなおカマという解釈。


前回公演でモモ太郎役だった塩崎こうせい氏。
今回は当初予定されていた沖野晃司氏の怪我で急遽クロガネ役に。
塩崎氏がX-QUESTの作品で悪役を演じるのは非常に珍しいのだそうで、貴重な公演となった。
大谷殿の親友・横内亜弓殿。今回はトレードマークのメガネを外したセクシー系の役。スタイルいいんだな…。
妖刀鬼切を守る人形役:佐藤仁美殿。
私を土星に連れてって!』の時も数々の記憶に残るセリフで笑わせてくれたが(当時、「お前に喰わせるタンメンはないじゃな〜い。初めての方にお売りするドモホルンリンクルはないじゃな〜い」というセリフが、見終わってしばらくしても頭の中をグルグルと…(笑))、今回も、中盤の、
「本編より面白くするわよ〜」
という“サイドストーリー”は、爆笑の連続で、シリアスな物語の中で、いい意味での息抜きになっていた。


そしてやはり、四方八方から観ることの出来るステージ。
殺陣の場面は格闘技観戦の気分。
出演者総出のダンス場面は、横浜アリーナハロコンを思い出させる。
いずれも場内整理をしていたスタッフが口から血を流すほどの(?)迫力。
ラスト、シロガネとモモ太郎の一騎討ちの場面は、ただただ美しかった。




――『金と銀の鬼2011』、了――