南アルプス天然少年団

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通りすがりの傍観者の足跡。

『かば2』評

(公演終了につき、ネタバレ制御機能停止。舞台未見で楽しみをDVDにとっておられる方は読まないか、読んでも斜め読みしてください)




前作から二年後―。
父・謙太郎の三回忌法要の日に、姉妹が菅原家に集まる。
相変わらず玲子(大谷雅恵)は到着が遅れていて、京子さん(鈴木佐和)は口うるさい…など、前作のオープニングを彷彿とさせる流れ…。




そんな中、留学していた姉妹の従妹・しとね(三好絵梨香)が帰国…。


二年前の出来事を知らない彼女が、わからないことを他の登場人物たちに訊ねていく。
つまり彼女が、前作を観ていない観客にとっての案内役となってくれるわけだ。
そのためか、少々頭の足りない設定になっているのが効果的である。




というわけで、前作を観ていない人にも楽しめ、前作を観ている人にはさらに…、といった内容。
前作で不明瞭であった時任(小高仁)と寺岡(Nao)、そして父・謙太郎との関係もはっきりするし、さらに時任のエプロンに、前作のアフタートークショーにて村田めぐみ大谷雅恵ご両名ご推奨であったメイド風が実現している…、など小ネタも満載。




『かば』の重要な主題であった、
「かば=見た目と中身は違う。他人をどれだけ理解しているか…?」
ということは、前作でやり尽くしてしまったからか、今作ではやや希薄である。
しかし、前作で登場の少なかった寺岡(Nao)と京子さん(鈴木佐和)、それに新たに登場する星野君(植木まなぶ)にスポットを当てることによって、そのことが補われている。
どう見ても男性には見えない寺岡は、その存在自体が主題を象徴している人物といえるだろう。
京子さんについては、話題が現実の結婚生活に集約される為、やや説教臭い内容にはなってしまうのだが…。
一方、星野君については言わずもがな…(笑)




また、主題と表裏一対となる、
「人を誤解することの怖さ」
ということは今作でも生きており、玲子(大谷雅恵)としとね(三好絵梨香)がゆりあ(つつみかよこ)と交わすかみ合わない会話、若菜(柴田あゆみ)の恋愛や縁談をめぐる登場人物個々の思惑など、前作同様の綿密に計算された人の出入りによって物語が進行していく。
誤解やひとり合点、その場しのぎの取り繕いによって、問題はますます複雑に(観客にとっては面白く)なっていく…。
このあたりが、この芝居の真骨頂であろう。




そして、前作が、姉妹が亡き父と向き合う物語であったのに対し、今作では、亡き母と向き合うことになる。
姉妹の中で、子供を身ごもった弥生(斉藤瞳)だけが、母と対話出来る、というのが深い意味を感じさせる。
しかも弥生の前に現れる母・静枝(柴田あゆみ二役)は、弥生を身ごもっている時の姿であるという…。


これ、ハロプロ関連の舞台の中でも、屈指の名場面であろう。




終盤、悦子(村田めぐみ)が弥生(斉藤瞳)に渡す為に、徹夜で作ったカバのぬいぐるみ…。
これが見事なまでに、ブサイク極まりないのだ。


思いは込もっている。
しかし…、いや、だからこそ?、どうしてもブサイクになってしまう…。


カバのイメージは、こんなところにも生きているんだな…(笑)