南アルプス天然少年団

南アルプス天然少年団

通りすがりの傍観者の足跡。

鳳凰三山・第三日

南アルプス天然少年団・鳳凰三山山行記』、完結編。




期日:2008年7月21日〜23日
参加者:団長、副長、筆者




鳳凰三山
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%B3%E5%87%B0%E4%B8%89%E5%B1%B1


地図
http://yamachizu.mapple.net/mapimg/1-079-houo.jpg
http://www.minamialps-net.jp/MAP/houo.html
http://www.asahi-net.or.jp/~su7t-umhr/YAMAdata/houousanzan.htm





2008年7月23日―。



薬師岳小屋の朝

4:20起床。
ご来光を拝むべく、同宿の方々が皆、起きだした。
筆者も小屋の外へ。
寒いので、フリースに長ズボン。
砂払岳方面へ歩いて行こうとすると、団長が、
「ちょっと、薬師岳の方に行ってみる」
と言って、歩いて行ってしまった。
ちょっと遅れて小屋から出て来た副長、
「あれ?団長は…?」
筆者「なんか、薬師岳の方に行くって…」
副長「薬師岳なら今日これから登るのに…」
筆者「いや、途中まで、って言ってた」
筆者は副長と砂払岳方面へ向かった。




4:47。
というわけで、ご来光―。



振り返ると、北岳ほか白峰三山も、山の朝―。



小屋へ戻る途中、薬師岳から一人降りてくる団長の姿が見えた。
副長「あれ、完全に登っちゃったなぁ…(笑)」
降りて来た団長。
「うん、登っちゃった(笑)…だから、薬師岳のことなら何でも訊いてくれ」


ともあれ、今日は天気良さげで何より。




5:30朝食。
今日は先輩氏よりも先に出発することとなった。
一昨日の登山口から、ずっと同じコースだったが、今日の途中からは別の道をゆくこととなる。
小屋前にてご挨拶申し上げた。
先輩氏「今日でお別れですねぇ…。お気をつけて…」
と、丁寧なご挨拶を受けた。


6:00出発。
三日目ということもあり、ザックの重さには慣れてきた感。
背負っている水が減ってきたのも大きいのだろうが…。



薬師岳

10分ほどで薬師岳山頂に到着。
標高2780m。
薬師岳小屋が2710mだから、ほんのひと登りになるわけだ。



展望抜群♪
ようやく会えたね、富士山くん。



6:25、出発。
観音岳はもう目の前。



よっすぃ〜岳(←これはかなり無理やりだな…)から花音岳へ。


稜線を行く。




雲海が凄い…。


副長「これだろ!…これ、写真撮らなきゃダメだろ!」



副長「こういうの見て、『孫悟空』とか考えたんだろうな…」
確かに、この雲乗れそう…。



観音岳

砂っぽい道。
滑ったら大変なことになりそうだが、足跡で踏み固められた道を行くので、まあ大丈夫。
多少の岩場を乗り越えて…。


7:00、観音岳山頂に到着。
標高2840m。鳳凰三山最高峰である。



観音岳から薬師岳を振り返る。
雲海の向こうには、富士山―。



そして、ここも雲海に囲まれて…。



反対側には、地蔵岳(2764m)が見える。
副長「あれあれ、あの先っちょが、オベリスク…」



事前にコースを調べた時に、
オベリスクってなあに?」
と副長に訊いたところ、副長は以前に地蔵岳に行っているので、いろいろと教えてくれたのだが、実際に見てみるとたいしたものである。


[参考画像]近くで見るとこうなるらしい。



副長「ね、あれはクライミングの技術がないと登れないよ」
確かにそうだ…。




深田久弥氏の『日本百名山』によれば、このオベリスクに登ったのはウォルター・ウェストンで、1904年のことらしい。


ウォルター・ウェストン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3


この時のウェストンには面白い話がある。
彼は猟師たちの道案内で、ここにやって来たわけだが、オベリスクに登ったことで、その猟師たちに大変な尊敬を受け、麓に社を建てて神主になるよう熱心に勧められたらしい。


ウェストンの本職は、牧師である。




ところで、我々であるが―。


副長「近くまでは行けるけど…、どうする?」
我々の選択としては、地蔵岳を諦めて、今、下山を始めると、ゴールの青木鉱泉で多少ゆっくり出来る上、副長は鈍行で今日中に名古屋へ帰ることが出来るのである。
筆者「うん、もう、二つ登って満足したからいいや」
鳳凰二山”にはなるが、昨日の砂払岳も入れたら、三つになるし…(笑)
団長も同意したので、じゃあ、写真撮ってそろそろ出発…と思ってた頃、先輩氏が山頂に到着した。
「ああ、これは、いい人たちに会えた」
頼まれたので、写真を一枚撮ってさしあげる。
地蔵岳へ向かう先輩氏とは、これでお別れである。
先輩氏のご無事を祈って、7:20出発。



鳳凰小屋

7:40、鳳凰分岐に着いた。



地蔵岳への道を見送り、ここから鳳凰小屋まで急な下り。
いわゆる急登の逆で、これもまたえらい大変…。




8:20、鳳凰小屋に到着。
ちょうど小屋前のテラスで昼寝…、いや朝寝か…の小屋のご主人が我々の出現に驚き、
「あれ?…もう降りて来たのか?…地蔵岳行かなかった?…なんでだよ、あれが一番見ごたえあるのに!…」
と、まくしたてられてしまった。
副長「いや、僕は以前に行ったことがあるんですよ」
「なんだ、そうか…」
と言われて、ご主人は再び朝寝に…。
なんだかずるいような気もするが、まあいいか…。


なお、この小屋は沢沿いなので、水が豊富。
おそらく今回のコース、最後の補給場所となるのだろう。
しかし、先ほどの急な下りの為に、すでに膝が笑い始めている。
筆者「もう、膝が笑ってるよ」
副長「まだまだ、これからだぞ」
水を汲んで、8:30出発。



ドンドコ沢


しばらく沢沿いの道を行くと…。


まずい…、左膝が痛くなってきた…。


那須(1999年)で痛めた古傷なのだが、調子に乗って下りを急ぐとこうなる…。
そこで相談して、団長と副長に先に行ってもらうことにした。
副長「後ろに付いてると、変なプレッシャーかけちゃうし」
団長「適当なところで、休憩しながら待ってるから…」
ちなみに副長も以前に怪我をした膝が痛むらしい。


というわけで、筆者は後ろから遅れて行くことになった。
下りの道、といっても多少のアップダウンはあるわけで、不思議と登る時には痛くないのだが、下ると時折痛みがくる。


団長たちは、実際いいところで待っていてくれた。
筆者が追いつくと、一番休みやすい場所を空けてくれたり…。
ありがとね。
副長「団長は優しいな♪」




なお、このコースは、ドンドコ沢という沢近くを行く為、五色滝、白糸滝、鳳凰の滝、南精進滝…と、途中いくつもの滝がある。


沢もいくつか渡ることになるコース。
途中、いくつ目だったろうか、沢で昼食を入れた。



しかし、下りとはいえ、長い道のりである。


副長が以前に地蔵岳に登った時は、この道を逆に行った(つまり登った)のだそうで、
「死にそうになった…」
らしい。
しかもその時、副長はテント担いでたんだよな…。


前述の深田久弥氏も地蔵岳へはこのコースをたどったらしく、しかもその時同行したのは小林秀雄氏と今日出海氏だそうだ。
さぞや文句の多い、口うるさい登山だったに違いない(笑)




やがて、分岐を過ぎると沢沿いの道へ。



傾斜がなだらかになってきたので、もはや膝もさほど痛みを感じない。
だいぶ蒸し暑くなってきたので、下界へ近づいてきた感…。



青木鉱泉

14:55、ようやく、ゴールのえんな鉱泉に到着。



約七時間半の山下りがようやく終わった。




ところで、実はまだ、ここから駅までの路線バスが運行されていない時期なのである。
副長「タクシー呼ぶと40〜50分かかるらしいから、タクシー呼んでから風呂入ろう」




というわけで入浴♪
入浴料1000円也。



入浴後は、もう下界へおりるので、服も着替えた。
何故だか団長はアロハシャツに着替えている。
副長「これから海行くの?(笑)」


15:50、タクシーで韮崎駅へ向かう。
15:40、韮崎駅到着。


これはあとで、それこそ『シンデレラ the ミュージカル』を観に行ってから知ったのだが、韮崎というのは、新宿コマ劇場宝塚歌劇団を作った小林一三氏の出身地なのであった。


ここで名古屋へと帰る副長と別れ、筆者は、アロハシャツに登山靴という、夏を一人占めしたかのような人物と共に甲府へ向かった。
甲府発の電車に乗り換えて八王子まで…。




八王子で人の多さに驚いたり…。
電車内での人の話し声が、そんなに騒いでるわけじゃないのに、ものすごく頭に響いたり…。


ちょっと、妙な気分を味わった。




―完―