南アルプス天然少年団

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通りすがりの傍観者の足跡。

新・街道をゆく〜浜松のみち〜後編

やらまいか


ガイドブックを買って浜松城をあとにした。
400円であったが、内容はなかなかのボリューム。
徳川家康没後400年だからという理由だけで400円にしたのではないか…?)
とすら思えてくる。

よく見ると、表紙がももクロ百田夏菜子殿であった。

「浜松やらまいか大使」だったんですな。

この「やらまいか」というのは浜松市など静岡県西部(旧・遠江国)の方言で、「やってみよう」「やろうじゃないか」という意味なのだそうだ。
記者の窓「やらまいか」精神



再び、浜松Forceのある繁華街の方へ戻る。

浜松Forceの隣の通り、肴町通りに「やらまいかショップ」というのがあった。
浜松地域ブランド「やらまいか」 毎日のお買い物に、浜松のお土産に、浜松の観光に
浜松の名産品を扱っている。
うなぎの肝の佃煮というのがあったので珍しいので買ってみた。

ちょうどところてんの無料配布サービスをやっていて、ご馳走になった。


芸能の神

続いて、前日から気になっていた、浜松Forceと同じ通り(アルコモール有楽街)にある黒田稲荷に行ってみた。

ここは、芸能の神であるらしい。

もともとは普通のお稲荷さんであったらしいのだが、ある時期から芸能の神様になった。
そのきっかけとなったのは地元の呉服商だそうで、そのエピソードがなかなか面白い。
その呉服商は商売がうまくいっていなかったので、この黒田稲荷に願をかけてから、たまたま地元にコンサートに来ていた新人歌手の都はるみに会いに行き、店で扱っている着物を着てくれるよう頼んだところ、着てくれたのだという。
以降、都はるみが着ている着物ということで店は繁盛し、都はるみも大スターとなった…というお話。
意外と知られていない浜松の超パワースポット。 | we love 浜松〜浜松エンジョイ情報倶楽部〜
浜松・遠州の隠れ伝説シリーズ【黒田稲荷神社編】│しゃべりば☆旅ラジTV
http://www.mapion.co.jp/news/local/tabiness-11324-all/
鳥居の奥には都はるみ殿直筆の大きな絵馬が奉納されている。

ほかに一般客からの普通サイズの絵馬も奉納してあって、見るとやはりどこかのバンドやどこかの学校の吹奏楽部のもので、コンサート成功祈願的なものが多かった。
前日浜松Forceでライブをやったアップアップガールズ(仮)に「ウチの服を着てください!」と頼みに来た地元のアパレル関係の方は居なかっただろうか(笑)
というか、アプガさんたちは昨日参拝したのだろうか。
上記サイトによればアップフロントの大先輩も訪れていたようだが…。


名匠の里

浜松城へと続く大手通り旧東海道)沿い、浜松Forceの裏側のあたりに、「江馬殿小路跡」という碑が立っている。


かつてここに江馬殿小路という路地があった。
現在は道じたいがなくなっているが、この通りにかつて「尾張屋」という漬物屋があって、それは日本映画の名匠・木下惠介監督(1912-1998)の実家であり、生誕の地なのである。

ということは、弟で作曲家の木下忠司氏(1916-)や妹で脚本家の楠田芳子氏(1924-2013)の実家・生誕の地でもあるわけである。
しかし、徳川家ゆかりの浜松で「木下」姓は面白い。
尾張屋」という屋号からして先祖は尾張(愛知県西部)出身だったのであろうか。尾張出身の木下藤吉郎秀吉との関わりはあるのかないのか、興味あるところである。


というわけで、木下惠介記念館に行ってみる。


映画監督木下惠介の足跡を継承し、映像文化を創造する木下惠介記念館
拝観料100円也。
入ると、客が筆者しか居なかった。
最初に職員の女性が丁寧に館内の説明をしてくれた。
第一展示室と第二展示室とがあって、第一→第二の順に見るのが良いらしい。
但し、「第二」の方に木下惠介監督の簡単な略歴を紹介したDVDが用意されていて、最初にそれを観ると展示がわかりやすくなるという。
「30分くらいあるのですが、お時間はございますでしょうか?」
「大丈夫です」
と答えて、DVDを鑑賞させていただくことにした。
「今、エアコンをおつけしますね」
この日は少し暑かった。どうやらこの日、筆者の前にも客はだれも居なかったらしい。
前半は写真で構成された木下監督の略歴が紹介される映像。
後半はドラマ仕立てになっている『天才と呼ばれたオトコ』という作品。
木下監督の現役時代の設定で、撮影所長(城戸四郎?)が撮影所で若い脚本家や監督たちに木下監督の作品を語り、「お前たちも木下みたいな映画を作ってみろ!」とはっぱをかけるという内容で、要所要所で実際の木下作品の映像が紹介される。
木下監督の古巣である松竹が製作したもので、ロケはこの建物で行われたそう。
そういえば…と周囲を見渡すと、ドラマの中に出てくる壁や窓が同じだった。
演出は『しあわせ家族計画』の阿部勉監督、主演(撮影所長役)は俳優座の田中壮太郎氏。


DVDを観終わって、先の職員女史に言われた通り、第一展示室→第二展示室の順で拝観した。
第一展示室には木下監督の書斎が再現されていた。
本棚の書籍も実際の監督私蔵のものであるらしい。
映画の元ネタとなったもののほか、木下監督と関係の深い高峰秀子山田太一関連の書籍が多い。なかには田村正和写真集なんてのもあってなかなか興味深い。
ほかに、灰皿コレクションなんていうのもあった。そういうご趣味であったのか、色とりどりで綺麗である。
木下惠介監督は脚本家としては口述筆記の人で、部屋の中を歩きまわりながらセリフを言ってそれを助手に書かせたという逸話を聞いたことがある。その方が演出する際に役者の歩数を計算できるので便利だと語っていたそう。
主に口述筆記を担当していたのは、当時木下監督の助監督を務めていた愛弟子の山田太一氏であるらしい。


第二展示室はフィルモグラフィー
各作品に関係した写真や解説が多く展示されていた。
実際に使われていた台本も中が読めるようになっていて、ところどころ木下監督がカット割りなどを鉛筆でメモしたあとがある。
筆者は木下作品の中では監督第一作の『花咲く港』(昭和18年山中貞雄賞=新人監督賞=受賞。同時受賞は『姿三四郎』の黒澤明)のとぼけた感じが好きで、この作品は南九州のとある小島での話なのだが、監督の故郷でもあるこの浜松でもロケが行われたらしい。
映画監督木下恵介|トップ
『お嬢さん乾杯』『カルメン故郷に帰る』『二十四の瞳』『野菊の如き君なりき』『喜びも悲しみも幾年月』『楢山節考』『父よ母よ!』…。
10本くらいは観ているのだが、全49作品には到底及ばない。
展示の解説を見て気になった作品が少なからずあったので、今後観てみたいと思っている。
この記念館では月に一度木下監督作品の上映会も開かれていて、館内には作品の閲覧コーナーもあった。近所にあれば通うんだけどなぁ…。



黒田稲荷に木下惠介記念館。
意外にも浜松は芸能の街であった。


帰京

最後に浜松名物を食べて、浜松をあとにした。
浜松餃子はもやしが乗っているのが特徴である。

浜松ラーメンは出汁にうなぎやしらすを使っているそう。味が濃い。



今回の遠征は静岡県在住・アプガ:森咲樹初の凱旋公演ということが主眼であったので、“森咲樹リスペクト”として、小田原まではロマンスカーで行くことは決めていた。
で、そのあと小田原→浜松だと新幹線使うほどのこともないか…と、あとは鈍行の旅だったわけであるが、帰りも鈍行で小田原からロマンスカーに乗った。


せっかく小田原に寄ったのだから…と、干物を購入。
一部で話題になっていたワンコイン干物。
アジとかますそれぞれ2尾ずつで税込540円。お手頃ですな。




――新・街道をゆく〜浜松のみち〜、了――