南アルプス天然少年団

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通りすがりの傍観者の足跡。

ミスターラグビーの引退

ラグビートップリーグのオールスター・チャリティーマッチが7日、福岡市のレベルファイブスタジアムで行われ、オレンジ・オールスターズが45−40でグリーン・オールスターズを下した。MVPには引退を表明している元木由記雄神戸製鋼)が選ばれた。


オレンジは後半11分、今季限りでの現役引退を表明した元木と、現役続行の意向を示している大畑大介神戸製鋼)をそろって投入。40−40で迎えた39分には、ゴールポスト付近にこぼれたボールを元木が押さえ、引退の花道を自らの決勝トライで飾った。元木はこのトライでMVPにも選出され、熱いラグビーファンから大きな拍手が送られた。

http://www.sanspo.com/rugby/news/100307/rga1003071516000-n1.htm

明治大学一年生で日本代表に選ばれ、在学中に既に「日本最強のセンタープレイヤー」の名をほしいままに。
以後、日本代表主将を務めるなど、常に日本ラグビー界の中心選手だった。
1996年には世界オールスターチームというべき英国バーバリアンズにも選ばれている(日本人で選ばれたことがあるのは神戸製鋼の先輩・林敏之選手と二人だけ)。
これもまた凡庸な言葉だが、「ひとつの時代が終わった」感。
今後ラグビー界は「ミスターラグビー」と呼ばれる人材を輩出出来るかどうか…。



元木選手で強く印象に残るのは、明大主将を務めた大学四年の時。
この年の明大は、大学選手権の準決勝で“イチかバチか”の超攻撃型ラグビーを仕掛けてきた同志社大に苦戦した以外は順調に勝ち進み、決勝でも法政大に圧勝し優勝。
とくに各試合、ディフェンス(及びディフェンス予知)での元木主将のプレイは神がかり的であり、
「今季の明治の失点は、すべて元木の居ない地域で起こっている」
と評されたほど。


そして迎えた日本選手権(当時は社会人・大学の優勝チームの一騎討ち)。
相手は当時5連覇中の神戸製鋼
この年の神鋼は、社会人リーグから社会人選手権に至るまで、負けるどころか相手にリードさえ取らせなかったという最強チーム。
その神鋼相手に、あろうことか元木明治は、前半終了間際に逆転トライを決めたのである。
これがこのシーズンの神戸製鋼が唯一リードされていた時間帯。
ハーフタイムで円陣を組む神鋼フィフティーンの真剣な表情が印象的であった。



ちなみに元木選手、明治大学では文学部の演劇専攻。
卒業論文は「『男はつらいよ』について」であったという。
いつか“寅さん”について語ってもらいたいものである。