南アルプス天然少年団

南アルプス天然少年団

通りすがりの傍観者の足跡。

裾をつかむ

ああいう形での休業。
その後の不幸な出来事。
正直ヒヤヒヤしながら歌を聴いていたのもまた事実。


愛の讃歌』を歌い始めた時は、一瞬たじろいだ。
これは愛する者を失った歌ではないか。
エディット・ピアフが恋人だったボクサーの不慮の事故死のあと、彼への募る想いを歌にした、とされてきた。


ただ、現在ではその説は否定されているようである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E3%81%AE%E8%AE%83%E6%AD%8C




どうもいけない。
こっちがビクビクしてどうするんだ…(笑)




だから、彼女が自らその時のこと(と思われる)を語り始めた時には、むしろ安心して聴くことが出来た。
ああ、大丈夫だな。
自分で振り返ることが出来るんだったら…。


そして、『ありふれた奇跡』。

「私らしく生きればいいよ」
だけどそれが一番むずかしい
悩んでるときでも迷ってるときでも
「私」であればいいね…
ずっとさがしている
もっと輝く未来
それは私の中にあるよね
「普通」という奇跡が明日を創ってく
(作詞佐藤純子、作曲因幡晃


すると歌終わりで、彼女は何かの思いを噛みしめるように、ワンピースの裾を、ギュッ!とつかんだのである。
それも、二度。
ゆったりとした曲調とは、まったく異質の動き。


ハッとした。
拍手することすら忘れて、思わず、彼女の顔を見上げてしまった。
照明の関係でよくはわからなかったものの、目が赤くなっているようにも見えた。
それが何の思いなのか、筆者ごときにわかるはずもない。
でも確かに、この人は辛い想いを抱えて、それを乗り越えて、「ここ」に帰って来たんだ、ということは筆者程度の人間にも確信出来た。


またしかし、その彼女の動きに、力強さを感じたのもまた、事実。
柔らかな歌声とはまた違った、強い意志を感じる力強い仕草―。
大丈夫、この人はまた、今まで以上に、素晴らしい歌声を聴かせてくれることだろう。




おかえり。