南アルプス天然少年団

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通りすがりの傍観者の足跡。

映画『ラグビー野郎』後編


ラグビー野郎 : 作品情報 - 映画.com

概要

1976年 東映東映チャンネル 初回放送 2019年9月9日)
監督■清水彰 脚本■鳥居元宏・野波静雄
【出演】
矢吹二朗矢吹二朗 江口文子■いけだももこ 秋月雄平■谷隼人 山路久子■川崎あかね 大石建■南条弘二 金光満■岸部シロー岸部四郎) 平沼■伊吹新吾(伊吹剛) 熊田大五■山本麟一 久保勉■福本清三 水野真弓■小泉洋子 相馬■誠直也 秋月の妻■奈三恭子 矢吹の父■疋田泰盛 レフェリー■高岩淡 大館力男■千葉真一


出演者

主役が矢吹二朗、ヒロインがいけだももこという、共に現在では芸能界を引退しているコンビ。


矢吹二朗氏は千葉真一氏の実弟として知られる。

つまり、真瀬樹里新田真剣佑・眞栄田郷敦姉弟の叔父にあたる。
特撮系のオールドファンには「千葉治郎」名義で出演していた『仮面ライダー』のFBI特命捜査官・滝和也役が有名だろう。
この『ラグビー野郎』で芸名を役名からとって「矢吹二朗」に改名したらしい。
柳生一族の陰謀』の映画版(1978年)では千葉真一演じる柳生十兵衛の弟・左門役(つまり、兄弟で兄弟役)、テレビ版(1978-79年)では十兵衛を助ける「裏柳生」のリーダー・フチカリ役だった。
個人的には、三浦友和主演の『青年の樹』(1977年)の暴力団組長の息子で東大生役が印象深い。
千葉真一氏も友情出演ならぬ“兄弟愛”出演しており、矢吹をラグビー場まで乗せていってやるダンプ運転手。同じ東映の『トラック野郎』シリーズばりの爆走を見せる(もちろん、追ってくるパトカーを尻目に大暴れ)。

甥にあたる眞栄田郷敦氏は『ノーサイド・ゲーム』でラグビー選手役、チームの救世主となる七尾役だった。


ヒロイン・いけだももこ。

活動期間が約5年と短い幻の美人女優。
草刈正雄版の若大将シリーズ『がんばれ!若大将』(1975年)でヒロイン。つまり加山雄三版なら星由里子か酒井和歌子がやった役。
ほかに、テレビ『江戸を斬るⅡ』(1975-76年。主演・西郷輝彦)、映画『青春の構図』(1976年。主演・岡田奈々)などに出演。
『がんばれ!若大将』はアメリカンフットボールの話だし、『青春の構図』はバスケットボール部のコーチ役だった。スポーツドラマに縁のある人でもある。
寺内貫太郎一家』(1874年。主演・小林亜星)では当時アイドルとして人気絶頂だった西城秀樹の恋人役で、当時秀樹ファンの嫉妬(憎悪?)をかなり買ったらしい。それを意識してか、インタビューで「西城さんは好みのタイプじゃない」とか発言してしまって、今だったら炎上キャラだったのかもしれない(笑)
この『ラグビー野郎』が芸能生活最後の仕事だったらしい。こののち、六本木のろばた焼き「田舎屋」の社長と結婚し引退。まだ22歳だった。

(そりゃまぁ、矢吹も一目惚れしますわな…)


ライバル・相馬役の誠直也氏は元ラグビー選手。
刑事役などでおなじみの人だが、ラグビーのキャリアは半端なものではなく、福岡電波高等学校時代にラグビー部主将(ポジションはセンター)として全国大会で優勝というからすごい*1
試合の場面でドロップゴールを決める場面は堂に入ったものであった。

矢吹を誘惑する久子役は川崎あかね殿。
若い頃は現代劇でも時代劇でもセクシーな役が多かった人(しかもナイスバディ)。
大岡越前』(加藤剛主演)の和田浩治演じる同心・風間駿介を主役に据えたスピンオフドラマ『八丁堀暴れ軍団』(1979年)ではヒロイン役だった。
最近でも時折、時代劇の上品なおばあちゃま役でお見かけする。
北大路欣也版の『剣客商売』(2014年)で、秋山大治郎(斎藤工)がやくざ者に絡まれているところを助けるお嬢様のお付きのばあや役で出演していた。


東映脇役陣も多数出演。
矢吹の父役の疋田泰盛氏は東映時代劇の脇役常連。『大岡越前』などは毎回違う役でほとんど準レギュラーだったのではないか。

「5万回斬られた男」こと、福本清三氏(↑左から2番目)もラグビー部OBのコーチ役で登場。時代劇の方では最近でも『BLACKFOX: Age of the Ninja』(矢島舞美出演)で健在ぶりを見せつけられたが、現代劇出演作はなかなか貴重。
なお、レフェリー役の高岩淡氏というのは、東映のプロデューサー(のち社長、会長を歴任)。ラグビー経験者だったのかな?


あらすじ・後編(結末まで含まれているので要注意)


シーズンが開幕し、洛西大は快進撃を続けた。ようやく反省した矢吹(矢吹二朗)は秋月監督(谷隼人)に許しを乞う。初めは拒絶した秋月だったが、雨の中でも秋月の家の前に現れる矢吹の姿を見て再入部を認めた。
チームに怪我人が出たため、フランカーに大石(南条弘二)が抜擢され、矢吹もレギュラーに復帰、同時にキッカーを任される。高校以来のキック練習にいそしむ矢吹を文子(いけだももこ)が見守っていた。
東南大との決戦を前に、矢吹は父が危篤状態にあることを熊田(山本麟一)に告げられ、帰郷するように説得される。
帰郷した矢吹は持ち直した父(疋田泰盛)に試合に戻るよう言われ、試合会場に向かおうとするが、事故で列車が不通になってしまう。矢吹は通りがかったダンプカーにヒッチハイクを頼む。運転手の大館(千葉真一)は事情を知って快く引受け、矢吹は試合開始直前に間に合った。
スタンドで文子、久子(川崎あかね)が見守るなか、試合開始。矢吹の家族もラジオに耳を傾け、大館もカーラジオで試合中継に聴き入っている。

前半、相馬(誠直也)の活躍で東南大がリード、洛西大も矢吹のトライで差を詰める。
後半、先に東南大がトライ。矢吹は相手のタックルで一時倒れるが試合に復帰。大石らFW陣が踏ん張りスクラムトライで追撃。その後は一進一退の攻防が続くが、試合終了直前、秋月が練っていた作戦が見事成功して大石がゴールラインに飛び込み、一点差に迫る。矢吹がゴールキックを決めて逆転、洛西大が優勝を決める。




――映画『ラグビー野郎』、了――
 
 

*1:勝戦で膝と半月板を損傷してラグビーを諦めたらしい