南アルプス天然少年団

南アルプス天然少年団

通りすがりの傍観者の足跡。

『ばらえ邸』感想


(公演終了につき、ネタバレあり。たぶんDVDは発売されないと思うので…)



ある女性の葬儀に現れる四人の男女。彼ら彼女らは、20年ぶりに再会した同じ孤児院で育った仲間だった。
子供の頃、馬王(向田祐二)、裸王(大森郁)、恵王(SHU110)、低王(田代直子)と名乗り*1、“王の軍団”と称した彼ら彼女らは、皆それぞれ親の事情で孤児院に預けられたのだが、唯一親に引き取られたのが死んだ彼女=マル(みつばちまき)だった。「それでもみんなと一緒に居たい」というマルに「親が迎えに来たやつなんか出て行け!」と辛くあたり、孤児院を追い出した過去が四人にはある。みんなで土に埋めたタイムカプセルも、彼女ひとりは仲間はずれにしていた。
しかし葬儀のさなか、四人の前に死んだはずのマルが現れる。彼女は過去の冷たい仕打ちからか 四人を恨んでいる様子。わけもわからないまま四人は、彼女の妹と名乗る人物(大谷雅恵)の屋敷“ばらえ邸”に連れて行かれる。マルの親は大金持ちだった。そしてそこはかつて孤児院のあった場所だった。ということは、どこかにあの時のタイムカプセルがあるはず。それは地下の金庫の中にあった。
四人がマルだと思ったのは、実は瓜二つの双子の妹…、いや、もう一人(大谷)を含めた三つ子であった。そして四人は、マルは親の事業を引き継ぎ、四人が巣立ったあとなくなった孤児院の土地を買ったこと。遺言は「この屋敷を四人に譲ってほしい」というものであったことを聞かされる。
しかし、マルそっくりの妹は姉の気持ちを思い、四人を許そうとはしない。
やがて、みんなの前で、タイムカプセルが開けられる。
そこには四人それぞれの、マルの幸福を願う気持ちが綴られている手紙が入っていた。あの時四人は、彼女を親元に行かせる為にわざと辛くあたったのだった。そして仲間はずれにしたはずのマルの手紙も一緒にあった。孤児院から去る直前に、マルは穴を掘り返して自分の手紙も一緒に埋めていたのだ。そこには「いつかまたみんなと一緒に暮らしたい…」と書かれてあった。
すべての誤解が解け、妹たちはこの屋敷を四人に譲ることを決める。但し条件は、この屋敷の資金の残額を払うこと。そして「私たちも仲間に入れてくれること」だった…。




その他、妹と使用人の妙な恋愛模様のエピソード、前回好評だったグリーンマンなど。
また、カウンセラーをしている設定の恵(SHU110)が、観客をステージに引っ張りあげて即興カウンセリングを行なう場面も。
この場面では、SHU110氏の珍妙なカウンセリングもさることながら、メイド長役(無表情な役)のYOSHIKO先生が懸命に笑いをこらえている様子が面白かった。*2



大谷雅恵殿は演技的には安定していて、安心して観られる。
惜しむらくは、今回は彼女ならではの見せ場が無かったかなぁ…といったところ。
しかし、全体的には今回も楽しい舞台であった。


次回公演はYOSHIKO先生によれば、来年1月とのこと。




――『ばらえ邸』、了――
 
 

*1:馬裸恵低=ばらえてい。

*2:ずっと見ているのは気の毒だったので、すぐ目線からはずしたが…