南アルプス天然少年団

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通りすがりの傍観者の足跡。

散歩道楽、最後の公演『ゲジゲジ』千秋楽(3/10)


http://www.sanpodouraku.com/2015/gejigeji.htm
小劇場楽園ラインナップ




出演者

役名 演者 備考
ゲジゲジの男 上松コナン 散歩道楽
雨宿りの女 珠乃 散歩道楽
カスオ キムユス 散歩道楽
理性くん 植木まなぶ 散歩道楽
ムギさん 東桂  
黒木メイサ ヒルタ街 散歩道楽
のりちゃん 鉄炮塚雅よ 散歩道楽
エリザベス女王 川原安紀子  
四十五点の女 竹原千恵  
先輩の男 椎名茸ノ介 散歩道楽
拡張員の男 太田善也 散歩道楽

スタッフ

脚本・演出:太田善也
舞台監督:田中翼/吉成生子
舞台美術:田中敏恵
照明:上川真由美
音響:樋口亜弓/松丸恵美
衣装:渡辺まり
音楽:タカタタイスケ(PLECTRUM
宣伝美術:郷志郎
演出助手:成田ふみえ
撮影:宮本雅通
制作:天の川るり子/散歩道楽制作部
企画・製作:散歩道楽


解散公演の千秋楽

この3月は、なんだかお別れするものが多くて、Berryz工房が無期限活動休止、ガッタスも活動休止、そして散歩道楽も…。
この約10年ちょっと、当たり前のようにあったものが次々となくなっていく。


太田善也氏と散歩道楽は、メロン記念日主演の『かば』シリーズでハマって、その後も℃-ute主演のゲキハロ『携帯小説家』や、『レモンスター』『すこし離れて、そこに居て』などの劇団本公演、『ロマンチックにヨロシク』『ストロンガー』といった特別公演、さらに派生ユニットである散歩道楽男闘呼組やドリームダンなども観てきて、ハロー!アップフロント関連の舞台では、大人の麦茶と並んで最も馴染みのある劇団であった。
劇団員の皆さんもハロー!アップフロント関連舞台でアイドルたちを支えてくれていて、一人一人の芝居に思い出がある。
しかし最近はちょっとご無沙汰になっていて、アップアップガールズ(仮)定期公演の『小夏の部屋』で太田作品と久しぶりに再会。
これ、べつに事前に告知はなかったのだが、観ている途中で話の流れやセリフなどで、
「これの台本ってもしかして太田さん…?」
と思ったら、本当に太田氏であったという。
『小夏の部屋』は『2』もあって、また太田作品を観られると喜んでいた矢先の解散発表であった。


会場の小劇場 楽園はよく前を通ったり、向かいにある「劇」小劇場の開場待ちでその前に居たこともあるのだが、入ったのは初めてである。

風の強い日であった。
場内の構造は「劇」小劇場と似ていて、四角い舞台の二面側が客席になっている。キャパは80人ほど。
入場時にフライヤー類と共にパンフレットと「散歩新聞 最終号」という小冊子と、小さなクリアフィルを貰った。

「散歩新聞」には解散を惜しむいろいろな人からのメッセージが寄せられていて、村田めぐみ大谷雅恵殿のものがあった。

(村田殿にそんな野望があったとは…)
場内は解散公演の千秋楽ということもあって、関係者も多く、中神一保久保木秀直両氏といった盟友関係にある大人の麦茶の元劇団員の顔も見える(久保木氏は『携帯小説家』に出演している)。
村田めぐみ殿が入ってきて、場内整理をしていた劇団員の川原万季殿(℃-ute主演『あたるも八卦!?』作・演出)や成田ふみえ殿(『かば』シリーズなどの演出助手)と談笑していた。やがて大谷雅恵殿も来場、2人は最前の桟敷席に座った。
開演直前、太田氏が挨拶。
公演時間は85分、とのこと。
また、着用していた解散公演にあわせて作ったという物販の「Good-bye」Tシャツを紹介。
「100枚作ったんですが、思いのほか売れてまして、残り数枚となっております」


開演

舞台は未明の新聞販売店
眠れないゲジゲジ眉毛の配達員(上松コナン)が、ひたすら朝刊が届くのを待っている。
彼が内気であることをいいことに、理不尽なことばかりをしてくる先輩(椎名茸ノ介)が居る。
その先輩に対する対応を練るため、主人公の脳内では彼の分身たちが集まって会議が始まる。
議長役の女王(川原安紀子)、過激な男(キムユス)、冷静な男(植木まなぶ)、ふざけている男(安東桂吾)。
そして、セーラー服姿の女の子(鉄炮塚雅よ)は初恋の女性、セクシーな女性(ヒルタ街)は現在の理想の女性を象徴している。
先輩には女(竹原千恵)を紹介されるが、馬鹿にされ、さらに新聞拡張員の男(太田善也=怪演!)には理不尽なことに自分が配達する新聞を契約させられる。
さらに脳内会議は紛糾し、分身たちはついに仲間割れを始める。
ある日、酔った謎の女(珠乃)が新聞販売店にやってきて、男を話し相手とするようになる。



太田作品の登場人物たちは、基本人生あまりうまくいってない人ばかり。
じゃあ、それってダメな人生なのか?
…いや、そんなことはない
というのが首尾一貫したテーマのように思う。
これ以前にも書いたことだが、学生時代に英語教師が言っていたことで、かつてCMなどでも使われていた某化粧品会社のキャッチコピーに、
「For Beautiful Human Life
というのがあって、もちろん和製英語なのだが、英語圏の人たちにいちばん笑われるのだそうだ。
「Beautifulじゃない Human Lifeなど存在するものか」
ということらしい。


女は記者で、上司と上手くいっておらず、もともとの夢であった中東の取材へと旅立ち、残った男は眠ろうとする。
眠れなかった男が眠ろうとするのは、ちょっとだけ、ほんの少しだけだが前へ進もうとする意思の現れ。
太田作品らしく最後まで劇的なセリフはなく、淡々としたラストであった。



カーテンコールで太田氏が、
「あの…、別に泣きませんので…(笑)」
と、言っていたように湿っぽさは微塵もなく、笑顔の解散公演。
入場時に配布されたフライヤーの中には川原万季殿主宰のドリームダンのものもあった。とりあえずドリームダンは存続するらしい。
また今回、元劇団員である竹原千恵殿(『かば』シリーズのマネージャーの外山さん役)の芝居を久しぶりに観られたのも嬉しかった。
しかし最後の劇団公演で、役者:太田善也にあそこまで笑わされるとは思わなかった…。




それでは皆様、また、どこかで――。