南アルプス天然少年団

南アルプス天然少年団

通りすがりの傍観者の足跡。

大山詣り・1

二ノ塔から見た大山。(昨秋撮影)



大山(1251.7m)は丹沢山塊の東端に位置する。
いつもこの山を見て思うのは、
「絵に描いたような山だな…」
ということ。
なんというか、山の形がオーソドックスで、アニメにでも出てきそうな山なのである。


丹沢山塊は古くから修験道が盛んなところで、その中でも大山は山伏たちの本拠地であった。
開山は奈良時代後期の天平勝宝年間(749〜757年)と伝えられている。
山頂の大岩の上には阿夫利神社の本社が建ち、中腹には下社(しもしゃ)が、さらにその下には大山寺がある信仰の山である。
「阿夫利(あふり)」というのは「雨降り」が変化したものという説があり、古くは雨乞いの神であったらしい。
他に、商売繁盛、豊作祈願、無病息災などに霊験あらたかとされ、またピラミッド型の形容の為、遠くから見えるので航海の目当てにされ、航海の神ともされた。
江戸時代にはいわゆる『大山詣り』が流行し、落語の演目にもなっている。


落語「大山詣り」の舞台を歩く
http://ginjo.fc2web.com/141ooyamamairi/ooyama_mairi.htm


ちなみに江戸時代までは大山寺より上は女人禁制だった。
大山詣りに行く」というのは口実で、実際には行き帰りに酒を飲んだり博打をしたり*1の男たちのレジャーだったらしい。



大山に登るルートはいくつもあって、簡単に大きく分けると、小田急線の本厚木から、伊勢原から、秦野から、といったコースがある。
このうち簡単に登れるコースとしては、伊勢原からバスで大山ケーブル駅に行き(約25分)、ケーブルカーで下社まで上がり(約6分)、そこから山頂を目指す(約90分)というもの。
時間的に早いのは、秦野駅からバスでヤビツ峠に行き(約45分)、そこから登ると山頂まで、約70分。
参拝客が多い為、全般的に登山道はよく整備されていて、初心者にも登りやすい山である。



筆者は秦野駅からバスで簑毛に行き、そこから登るコースにした。
たいした理由はなく、単に簑毛ならよく知ってるからである。







2009年5月21日――。



秦野駅に着き、9:05発の簑毛行きのバスを待っていると、初老の登山者がやって来て、
「8:55のヤビツ峠行きはもう来ましたか?」
と、尋ねられたので、
「いや、8:55発は土日だけですね」
と答えた。
簑毛のさらに先、ヤビツ峠は丹沢表尾根や大山にも登れる便利なところだが、平日はヤビツ峠行きは8:18発の一本しかない。だから平日でも混んでいて、それが今回筆者がヤビツ峠からのコースをとらなかった理由のひとつでもある。
「そうか平日は一本しかないのか…。簑毛からヤビツまで歩くとどれくらいですか?」
「一時間ちょっとですね」
と答えると、
「う〜ん」
と唸ってどこかに行ってしまわれた。


バスには他にお客さんも乗っていたけれど、結局、終点の簑毛まで来たのは筆者一人だけだった。



「簑毛」という地名については、日本武尊伝説らしい。
日本武尊が大山に登ったあと、突然雷雨になったので、心配した村人たちが簑を持って迎えに行き、感謝した尊がミノゲと名付けた…という伝承がある。



簑毛9:30出発。
林道を登ってヤビツ峠への道と別れ、登山道に入る。

登山道はいくつか林道をまたいで行く。
この道は「関東ふれあいの道」という名前がついている。


静かだ。



10:30、ちょうど一時間ほどで簑毛越に着いた。

道はここで、尾根づたいに大山山頂に直接登るコースと、そのまま「関東ふれあいの道」を下社に向かう道に別れる。
ちょっと下社が見たくなったので、そっちへ行くことにした。


ここで、本日初めて筆者以外の登山者に行き合った。


道はアップダウンの少ない快適なコース。
しかし、鎖場もあった。

たいしたことはなかったが、「関東ふれあいの道」といいながら、なかなかの登山道である。


やがて、林の向こうに下社の建物が見えてくる。



11:30、下社(しもしゃ)着。
ケーブルカーで登って来た参拝客が多く、賑わっていた。

下社のすぐ下には茶店があり、盛んに客の呼び込みをしている。
まるで海の家だ。


とりあえず参拝、本日の山行の無事を祈る。


拝殿の脇には、大山名水が沸きだしている。

もちろんいただく。


こういう時に役立つ『愛の種』5万枚完売10周年記念イベントボトル。



準備万端(?)
さて、いよいよ山頂を目指すことにする。




―つづく―
 
 

*1:もちろん当時だって賭博は御法度だったが、山中は一種の治外法権でお咎めなしだったらしい。